2005年のゴールデンウィークは日本青年会議所・医療部会のカンボジア医療ミッションに参加してきました。
日本青年会議所・医療部会では、医療による社会奉仕と社会福祉の向上に寄与することを目的として、毎年カンボジアやネパール、ミクロネシアなどの発展途上国へ赴き、貧困のために医療を受けられない人々に対して医療援助活動を行なっています。
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【その時の痛みを取るための治療に限定される】 |
ミッションについては以前より興味はもっていながら諸事情により参加できずにいましたが
今回は日程の都合もよく、部会長が神戸JCの後輩ということもあり、おもいきって参加させていただきました。
わずか2、3日の行程であるため当然複雑な治療などは不可能ですし、型をとって入れ歯を作ることもできず、その日に完了できる単純な治療しかできません。となると、その時の痛みを止めるか、
抜歯などの治療に限定されてきます。しかし、それでも来て欲しいという要望があるらしいのです。
現地では、前もってカンボジアのNGO組織が医療ミッションのことを告知しており、
朝から多くの人々が集まっていました。現場は、田舎の孤児院で診療台などはなく、
机をベッド代わりに並べて、そこに寝転んでもらう、或いはただの椅子にすわってもらうだけの状態で行われました。
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【孤児院での授業風景と子供達】 |
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場所は孤児院ですが大人も多く集まってきます。ほとんどの人が抜歯希望でした。
痛い歯やボロボロの歯はとにかく抜いてほしいということなのです。実際に診察すると確かに
数本の歯はボロボロで、これまで歯医者へ行くこともなく、ずっと痛みをこらえてきたのだろうと推測されます。
歯医者とは無縁の人達で、ここで抜いてあげないと、この苦痛は終わりません。
というわけで、当日は、ベルトコンベアーに乗せられた気分で汗をたらたらと流しながら、
ひたすら麻酔をして、ひたすら歯を抜きつづけました。とにかくカンボジアは暑い。
首にかけたタオルもびしょびしょになるほどでした。でも現地の人は暑さになれているのか汗をかいていないのが不思議です。言葉は通じませんが、治療が終わるとみんな両手を合わせて一礼して笑顔を向けてきます。
その笑顔から感謝の気持ちが伝わってきました。聞くところによると、カンボジアの人は我慢強く、
少々の痛みにもじっと我慢するらしいが、できるだけ無痛治療を心がけました。
しかしこうしてやって無心に現地の人達と接してみると意外と充実感があり、
ひょっとして観光よりいいかもしれないという感覚も生じたような気もしました。
これがボランティアなんだと思いながらも、その半面、1回のみの診療が本当に彼らの利益になるのだろうか?・・・・
などという疑問も生じていました。
本当は「自立」が図れるような援助が理想なのでしょうが、
それ以前に彼らが自立できるための設備や環境がまだまだ不足しています。
やはり、まずはこのような形で始めるしかないのでしょう。
そして2日間のミッションが終わったあと貧富の差のある町の様子やキリングフィールドなどの
殺戮のあとをそのまま保存してある施設を視察した際には、この大地を支配している人間達の思考が理解できず、複雑な思いに駆られました。現地ガイドのナックという男性の家族もポルポトの犠牲者だと聞き複雑な心境でした。
その後シェムリアップへ飛び、アンコール遺跡の見学へも行きましたが、最後に立ち寄った
日本のNGOによって建てられたアンコール小児病院では、現地の日本人スタッフに病院内を案内してもらいました。
ここでは治療費を払えない人は無料で、アンコール・フレンズ基金という主に日本からの援助で成り立っています。
こうしてカンボジアに来て思うことは、世界中の争いの中で、支配者と呼ばれる人間達の抗えない力の犠牲となっている人達の姿を、どのようにとらえたらいいのだろうか、ということです。
・・・戦争の上でなりたっている資本主義経済の中でのわずかなボランティア活動。
争いがなければ、必要のない底辺の汗・・・・・
しかしよく考えると、カンボジア人でも、お金持ちの人はそれなりの治療を受けているはずなのです。
・・・ここが納得のいかないところです。
強いものが勝つという構造が永遠にかわらないかもしれないこの世界で、僕達がやっているボランティアっていったい何なのでしょうか?
でも、たとえ納得がいく答えが見つらなくてもやり続けることが必要なのでしょう。
医療関係者として、目の前の苦悩を取り除いてあげなければなりません。
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